マッドリブ、DJシャドウ、ピート・ロックなど名トラックメーカーから多大なプロップを受けている、デヴィッド・アクセルロッドの初ライブDVDのリリース記念インタビューが到着! ライブのことはもちろん、サンプリングされる側のサンプリングに対する考えや制作ポリシーなど、興味深い話が満載の超ロング・インタビューです。トラックメーカーやライターからのコメントとあわせてお楽しみ下さい!

私のためにミュージシャンたちは常に全力を尽くしてくれる
ロンドンのオーケストラもそうだった


ー 今作のコンサートが実現した経緯について教えてください。


David Axelrod(以下、D): ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(以下、R.F.H.)は世界で最も名誉ある5つの会場のうちの一つだ。そこには、デューク・エリントン、フランク・シナトラ、レナード・バーンシュタインなど、そうそうたる音楽家が出演してきたわけだから、そこで演奏したくない人なんていないだろう? ただ、企画には4年もかかった。だからDVDの冒頭で、R.F.H.の責任者であるグレン・マックスは、『ここまで来るのに長くて険しい道のりでした』と言っている。それは、彼がいつも満足のいく条件を提示してくれなくて、私が何度も拒否したからだ。最終的に、私のマネージャーのリサ・ハウゲンが正しい条件で契約を結んでくれたわけだ。だからシンプルな理由で実現した」


ー コンサートを実現させる上で難しかった点は?


D: コンサート前にインフルエンザになってしまったんだ。アメリカでインフルエンザが流行っていて、どんなウィルスかも分からなかった。私はこの部屋のテーブルで仕事をしていたんだけど、部屋がグルグル回ってるような感覚になったし、衰弱してた。でもコンサートのために作業し続けるしかなかった。“The Edge”のアレンジが最後にやった作業だった。それを完成させて、飛行場に向かう前に楽譜を封筒に入れて妻に渡した。それを私のコピーイストのザンに渡すように頼んだ。彼はとてもいい人だし、仕事が正確なんだ。彼が作業してからすぐにイギリスにFedexで送れるように住所も教えておいた。インフルエンザのおかげでそれだけ私の作業は遅れてしまった。


ー ロンドンのミュージシャンと仕事する上で難しかった点はありましたか?


D: 全くなかった。私は今まで、どこで仕事をしてもミュージシャンと問題はなかった。昔のスタジオのセッション・プレイヤーも、何でも演奏できた。朝からシェーンベルグを演奏して、夕方はロックンロールを演奏して、その間にデューク・エリントンを演奏しても、一切動揺することはなかった。私のためにミュージシャンたちは常に全力を尽くしてくれる。ロンドンのオーケストラもそうだった。


ー 今回のコンサートのオーケストラについて教えてください。


D: あのときに起用したオーケストラはThe Orchestraという名前で活動してる。彼らは自立したグループで、ツアーしたり作品も何枚かリリースしている。でも外部からミュージシャンを何人か呼ばないといけなかった。あのオーケストラのメンバーにはギタリストがいないんだけど、私の作品を演奏するにはどうしてもギターが必要なんだ。そしてイングリッドという女の子も参加したんだけど、素晴らしいサックス奏者だったよ。しかも彼女は可愛かったね。(笑)


ー 彼女のソロは素晴らしかったですね。


D: そうだね。他のミュージシャンのソロも素晴らしかったよ。彼らの演奏には驚かされたよ。みんな若いミュージシャンなのにね。


ー オーケストラとの作業プロセスは? リハーサルは短かったんですか?


D: いや、とても長いリハーサルだった。18時間のリハーサルをしたんだ。そのくらい長いリハーサルができることは希なことだ。でもグレン・マックスは賢い男でね、簡単にこのコンサートができないことを彼は知っていた。彼は私の音楽を熟知していて、私の楽曲が簡単ではないことを知っていた。シンプルに聞こえるんだけど、実はとても複雑な音楽なんだ。それは何においても言えることだよ。物理学では、『方程式が美しければ美しいほど、複雑なもの』だと言われてる。それが本当なのかは知らない。相対性理論が、実は醜い方程式かもしれないからね。でも実際は美しい方程式なんだ。


ー ローリング・ストーンズの“Paint It Black”、ビートルズの“Norwegian Wood”、そして未発表の曲を一つ演奏していましたが、これらの楽曲の選定基準は?


D: イギリスでコンサートをやるのなら、ローリング・ストーンズとビートルズの楽曲を演奏したいと考えていた。前からビートルズは大好きだったし、ローリング・ストーンズも好きだった。レノンとマッカートニーがとても好きだし、“Norwegian Wood”は前から大好きだったんだ。でなければあの曲は演奏しなかったよ。私はどんな曲を演奏してもいいわけだからね。多分ラジオで聴いたと思うんだけど、なぜか私はずっと“Paint It Black”をハミングしていた。それで『やってみよう!』と思ったわけだ。作品をレコーディングしたときとは別のオーケストラとコンサートを行ったわけだから、レコーディングされた曲を演奏するのも難しかった。オーケストレーションをし直すのは大変なことなんだよ。場合によっては、新曲を演奏する方が簡単だ。でも契約書の条件に従わないといけなかった。あのコンサートの中で唯一の新曲は“So Low”なんだ。“Paint It Black”と“Norwegian Wood”はアレンジメントではない。あれはrecomposition(訳注:作曲し直した曲)なんだよ。


ー その他はあなたの楽曲において、最もサンプリングされた楽曲を主に演奏していましたね。


D: それが契約の条件でもあった。グレン・マックスが私よりも賢かったんだよ。Mojo誌の編集長であるアンドリュー・メイヨが、R.F.H.で見たエンニオ・モリコーネのコンサートについて教えてくれた。モリコーネのコンサートはソールドアウトで、前半はみんなが知ってる楽曲を演奏した。でも後半は、彼がコンサートのために書き下ろした新曲を披露したんだけど、20分経過して既にオーディエンスが半分に減っていた。お客さんが出て行ってしまったのさ。グレン・マックスはとてもヒップな人なんだよ。彼は契約書の中に、140分のコンサートを演奏して、そのうちの8曲は「Songs Of Innocence」、「Songs Of Experience」の楽曲を演奏するべきだと指定していた。元々、彼は「Earth Rot」の楽曲も演奏して欲しいと言っていたんだけど、『コーラス隊も用意してくれるのか?』と訊いたら、『確かにそれはできない』と彼は答えた(笑)。だから「Earth Rot」の楽曲は演奏しなかった。それで、今までレコーディングされた楽曲ばかり演奏したんだ。その条件が契約書の中に明記されていたのだが、グレン・マックスの判断は正しかったよ。観客の反応には圧倒された。古い曲を演奏し始めると、拍手喝采だったし、観客が騒いでくれた。素晴らしかったし、最高のコンサートだったね。私がこれまで関わったトップ2のコンサートのうちに入る。


ー コンサートの中で、あなた方がドクター・ドレーが “The Next Episode”でサンプリングしたデヴィッド・マッカラムの“The Edge”を演奏したときがクライマックスだったと思います。その曲を演奏する前に『私は大きな偽善者だ。サンプリングはミュージシャンから仕事を奪うから昔は嫌いだった。しかしサンプリングされると、みんなに『クソ食らえ!』と言える大金が入ってくる』と言いました。その意味を教えてください。


D: 銀行口座にお金が入ってるから、誰にでも『クソ食らえ!』って言えるという意味だよ!ドレのあの曲はあまりにも売れたから、私の年金みたいなものになった (笑)。あの曲は私に良くしてくれたね。その上、私は最もサンプリングされた5人のアーティストのうちの1人なんだよ。EMIでサンプル・クリアランスをやってる人によると、私の音楽をサンプリングした曲を89曲も見つけたらしい。彼は私の大ファンで、その情報を教えてくれたんだけど、驚いたよ。その多くが、使用料を1セントも誰にも支払らわれていない。


ー ドクター・ドレーの“The Next Episode”を聴いたときは実際にどう思いました?


D: 私の前のマネージャーにこの曲のカセットが送られてきて、話を聞いたときは、『冗談を言ってるんだろ? 早く聴かせてくれ』と言ったんだ。それでマネージャーは曲を持ってきて2人で聴いたんだけど、驚いたね。最高だと思ったよ。本当に『ワオ、これは凄い曲だ』と思ったよ。あの曲はシングルになって、ビデオにもなった。お金がどんどん入ったね(笑)。もちろん、お金のために音楽をやってるわけじゃないけど、音楽をやりながら、お金が稼げるのは素晴らしいことだ。

ー もちろん印税がたくさん入ったとは思いますが、音楽的に“The Next Episode”は好きでしたか?


D: もちろん。何人かのヒップホップのプロデューサーがやってることは、非常に巧みだし、私も先に思いつきたかったと思うことがあるよ (笑)。ドクター・ドレーは“The Next Episode”で、私がイントロとして使用したフレーズをオーケストラの演奏の後に入れた。彼はオーケストラの演奏を4小節使って、その後にイントロのフレーズを入れた。それを聴いたときは、『なんてヒップなことをやるんだろう!』と思ったね。巧みだったよ。気に入ったね。


ー 『サンプリングはミュージシャンの仕事を奪ったから以前は嫌いだった』とコンサート中に言ってましたが、サンプリングについての今のあなたの見解を教えてください。


D: 確かにサンプリングはミュージシャンの仕事を奪った。ミュージシャンばかりが損してる。最近の演劇では、オーケストラの音が全て入ってる機材が使用されている。ブロードウェイやオフブロードウェイでも、それが全国の組合で大きな問題になっている。世界中でも問題になってるよ。ミュージシャンを全ての場所から締めだそうとしてるみたいだ。映画を見るときに、3人の音楽家だけがクレジットされていたりする。それを見ると、シンセサイザーで全ての音を作っているということだ。2人の演奏家がいて、1人が機材を操作してる人だ。それはいいことだとは思わない」

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